相続した親の家を兄弟で売却する方法
相続した不動産の販売方法を解説します

亡くなった親の家を相続した際、兄弟でその不動産をどう扱うかは大きな課題です。
「売却して現金で分けたい」「誰かが住み続けたい」など意見が分かれることも多く、トラブルに発展するケースもあります。

円満に解決するためには、相続登記の完了後にどのように売却や分割を進めるか、兄弟間でしっかり話し合うことが重要です。

この記事では、兄弟で相続した実家を売却する4つの方法と、それぞれのメリット・注意点についてわかりやすく解説します。

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親の家を兄弟で売却する際に気をつけるポイント

親が亡くなった後、その実家を兄弟で売りたい場合は、兄弟間の意思疎通が非常に重要になります。話し合いが不十分だと、遺産の分け方や売却による収益の分配をめぐって問題が起こる可能性があります。

また、親の家をまだ相続登記していない状態で売ることはできません。売却には、まず相続登記を行い、亡くなった親から相続人である兄弟に名義を変更しておく必要があります。登記が済んでいないと、不動産の売却手続きは進められませんので、ここは特に注意が必要です。

兄弟間で円滑に売却を進めるためにも、相続登記が完了しているか確認し、遺産分割の合意をしっかりと取り交わすことが大切です。

亡くなった親の不動産を兄弟で相続する際には、まず遺産分割の手続きを行う必要があります。このとき、不動産の名義を誰か一人の名義にする「単独名義」とする場合もあれば、兄弟全員の名義とする「共有名義」にするケースもあります。

特に共有名義となった場合は、売却に際して取り得る方法がいくつかあり、手続きや合意形成が複雑になることもあるため注意が必要です。売却方法については、このあと詳しくご説明します。

亡くなった親の家を兄弟で相続・売却するには?遺産分割の方法と注意点

#現物分割親が亡くなったあと、実家(親名義の不動産)を兄弟で売却するには、まず相続手続きを進める必要があります。その第一歩が「遺産分割協議」です。遺産分割協議によって誰が不動産を相続するかを決めたうえで、**相続登記(名義変更)**を行わなければ、売却はできません。

兄弟間で実家を売却するために選べる遺産分割の方法には、主に以下の4つがあります:

  • 現物分割:実家を誰か一人が相続する方法

  • 換価分割:不動産を売却して得た代金を兄弟で分ける方法

  • 代償分割:一人が実家を相続し、他の兄弟に代償金を支払う方法

  • 共有分割:兄弟全員で共有名義とする方法(後々の売却には全員の合意が必要)

 

これらの分割方法のいずれかを選び、相続登記を完了したうえで初めて売却が可能になります。方法によっては、売却までの流れや手続きの複雑さに差が出るため、状況に応じた適切な判断が重要です。

1,現物分割とは?不動産をそのまま相続する方法

現物分割とは、相続財産を現物のまま分け合う遺産分割方法です。たとえば、親が所有していた不動産は長男が相続し、株式や預貯金などは次男が相続するといったように、財産の種類ごとに分けて相続人が取得します。

この方法では、不動産を単独で相続した相続人だけが、その不動産を自由に売却できます。兄弟の誰かが実家を引き継ぐことに同意している場合や、不動産以外の財産で公平性が取れるときに選ばれるケースが多いです。

また、不動産が複数の土地で構成されていたり、広い土地である場合は、「分筆(ぶんぴつ)」によって土地を物理的に分割し、兄弟それぞれが別々に所有することも可能です。分筆後の土地は、それぞれの相続人が自分の持分として登記し、単独で売却できます。

2,換価分割とは?不動産を売って現金で分ける相続方法

換価分割(かんかぶんかつ)とは、亡くなった親の不動産を売却し、その売却代金を兄弟などの相続人で分け合う方法です。現物をそのまま引き継ぐ「現物分割」に比べて、不動産の価値を平等に現金で分配できる点が大きな特徴です。

実際には、兄弟の中から代表者を1人選び、相続登記をしたうえで不動産を売却し、売却益を各相続人の取り分に応じて分配する形になります。

ただし、換価分割を行う際にはいくつかの注意点もあります。

  • 不動産の適正な価格査定を行わないと、不当に安い価格で売ってしまうリスクがある

  • 急いで売却を進めると、価格交渉で不利になる場合がある

  • 売却益からは、仲介手数料や譲渡所得税などの費用も差し引かれるため、事前に確認が必要

 

兄弟での相続において公平性を重視したい場合や、不動産の活用予定がない場合には、換価分割が有効です。売却の際は不動産会社にしっかり査定を依頼し、納得のいく条件で売却を進めましょう。

3、代償分割とは?兄弟の1人が家を相続して他の相続人に代償金を払う方法

代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、亡くなった親の家などの不動産を兄弟のうちの1人がすべて相続し、その代わりに他の相続人に代償金(現金)を支払うことで公平性を保つ遺産分割の方法です。

この方法を選ぶことで、相続した家を単独名義にできるため、売却の手続きもその人が単独で行うことができます。兄弟で不動産の共有を避けたい場合や、相続した家にそのまま住み続けたい人にとって適した選択肢です。

代償分割のメリットには以下のような点があります:

  • 共有名義にならず、売却や利用の自由度が高い

  • すぐに不動産を売却しなくてもよいため、売却のタイミングを慎重に判断できる

  • 親の家に住みながら、ゆとりを持って売却準備ができる

ただし、代償金の準備が必要なため、ある程度の資金力が求められます。相場に応じた代償金の額や支払い方法については、相続人同士でしっかりと協議する必要があります。

 

兄弟のうち誰かが実家を相続し、他の相続人には金銭で公平を図る方法として、代償分割は非常に現実的な選択肢と言えるでしょう。

4,共有分割とは?兄弟で不動産を共同相続する方法と注意点

共有分割とは、亡くなった親が所有していた家や土地を、兄弟など複数の相続人で共有名義として相続する方法です。名義変更の際には、それぞれの持分割合を登記することになり、不動産は兄弟全員の共有財産となります。

この方法は「とりあえず名義を決めたい」「売却の方針がまだ定まっていない」場合に選ばれることもありますが、売却や管理において制約が生じやすいため、慎重な判断が必要です。

特に注意すべきポイントは以下のとおりです:

  • 不動産を売却する際には、共有者全員の同意が必要

  • 一部の兄弟が売却に反対した場合、売却自体が難しくなることがある

  • 将来的に共有関係がトラブルの原因になる可能性

共有状態のまま放置してしまうと、次の世代へ相続が繰り返され、さらに複雑な共有関係になるおそれがあります。
そのため、共有で相続した場合でも、早めに売却や持分整理を検討することが望ましいといえます。

 

共有名義で相続した不動産の具体的な売却方法については、次の章で詳しくご紹介します。

亡くなった親の家を兄弟で共有相続した場合の4つの売却方法

親が亡くなり、その自宅を兄弟で共有して相続した場合、不動産の名義は複数人の共有名義となります。このようなケースでは、不動産を売却する際に注意すべき点がいくつかあります。

共有名義の不動産は、通常の単独所有の不動産と異なり、売却に際しては共有者全員の合意が必要なことも多く、スムーズに進めるには工夫が求められます。

主な売却方法としては、次の4つの選択肢が考えられます。

  1. 兄弟全員の合意を得て、物件全体を第三者に売却する方法

  2. 自分の持ち分(共有持分)のみを第三者に売却する方法

  3. 自分の持ち分を他の兄弟(共有者)に買い取ってもらう方法

  4. 他の兄弟の持ち分をすべて買い取り、単独名義にしてから売却する方法

それぞれの方法には、メリット・デメリットや実務上の注意点があります。以下で詳しく見ていきましょう。

1、共有者全員の合意で親の家を売却する方法

共有名義の不動産でも、兄弟などの共有者全員が売却に同意すれば、亡くなった親の家を不動産全体として売却することが可能です。
この場合、兄弟全員が不動産の「売主」として売買契約を締結し、買主への所有権移転と代金の受け取りを行います。

売却代金は、それぞれの相続持分割合に応じて公平に分配されるため、遺産分割の一環としても有効な手段です。

この方法は、次のようなケースに特に向いています:

  • 兄弟間で売却方針が一致している

  • 揉めごとを避け、速やかに不動産を処分したい

  • 相続した実家を現金化して分けたい

ただし、1人でも反対する共有者がいると売却できないため、事前の話し合いや合意形成がカギになります。

親の家を兄弟で相続した後、共有名義のままスムーズに売却するには、全員の意思統一が必要不可欠です。

2,自分の持分のみを売却する

共有名義の不動産であっても、自分の持分だけを売却することは法律上可能です。特に、共有状態から早く抜けたいと考える場合は、自身の持分を不動産買取業者に買い取ってもらうという方法があります。

この方法を選べば、他の共有者と交渉せずに自分の権利を手放すことができ、現金化もスムーズに進みます。そのため、共有関係の煩わしさから離れたい方にとっては、有力な選択肢といえるでしょう。

ただし、共有持分のみの買取は、買主にとっても利用価値が限定されるため、通常の不動産売却に比べて買取価格が低くなりやすい傾向があります。また、第三者が新たな共有者として関与することで、他の共有者との関係性が悪化したり、後にトラブルに発展したりする可能性もあります。

こうしたリスクを十分に理解したうえで、専門家に相談しながら進めることが大切です。

3,他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう

兄弟など、他の共有者に自分の持分を売却するという方法もあります。
特に、他の共有者がその不動産を引き続き利用したいと考えている場合や、より多くの持分を希望している場合には、前向きに検討されやすい選択肢です。

第三者に売却する場合と異なり、共有関係にある身内同士でのやり取りとなるため、価格や手続きについても話がまとまりやすく、比較的スムーズに進められる傾向があります。

ただし、感情の問題が絡むこともあるため、売却価格や手続きの進め方については、事前にしっかりと話し合い、お互いが納得できる形にしておくことが大切です。必要に応じて、専門家を介してやり取りを進めることで、公平性や信頼性を保つことができます。

4,他の共有者の持分をすべて買い取ってから売却する

他の兄弟が所有する共有持分をすべて買い取り、名義を自分一人にまとめたうえで、不動産全体を売却する方法もあります。

この方法であれば、不動産を単独所有として扱えるため、売却手続きもスムーズに進みやすく、市場価格での売却も可能になります。他の兄弟がすでに手放す意向を持っている場合や、自身に十分な資金力がある場合には、有効な選択肢のひとつです。

ただし、持分の買取価格やタイミングについて、兄弟間で合意を得る必要があるため、事前の協議や条件整理が重要です。感情的なトラブルを避けるためにも、可能であれば専門家を介して適切に進めることをおすすめします。

亡くなった親の家を兄弟で売る際に起こりやすいトラブルとその対策

兄弟で実家を相続し、不動産を売却しようとする際には、感情や利害が絡み合うことで思わぬトラブルに発展することがあります。
ここでは、特に起こりやすい代表的なトラブルとその回避策を2つご紹介します。

1. 遺産分割協議がまとまらない

亡くなった親の家を売却するには、相続人全員による遺産分割協議で「不動産を売るかどうか」「売却代金をどう分けるか」について合意する必要があります。
しかし実際には、「実家を残したい人」と「早く売却して現金化したい人」で意見が分かれ、兄弟間で対立してしまうケースも珍しくありません。

こうした場合には、「代償分割」を選択する方法があります。これは、家を残したいと希望する兄弟が不動産を単独で相続し、代わりに他の兄弟に相応の金銭(代償金)を支払う方法です。
これにより、不動産は売却せずに済み、かつ他の相続人も公平に遺産を受け取ることが可能になります。

ただし、代償金の金額については相続人全員で協議し、合意する必要があります。また、口頭の合意だけでは後々トラブルの原因になりかねないため、協議の結果は必ず遺産分割協議書として文書化しておくことが重要です。

それぞれの分割方法を兄弟間で丁寧に確認しながら、実家をどう扱うか、誰が相続するかについて、冷静かつ具体的に話し合いを重ねることが、円満な相続への第一歩となります。

2,共有持分の売却で価格や手続きに関する対立が起きる

親の家を兄弟で相続し、共有状態になった不動産を売却する際には、「共有持分を他の兄弟に売却する」という方法が選ばれることがあります。
しかしこの際、特に売買価格の設定をめぐって意見が対立するケースが少なくありません。

たとえば、売主は「時価相当で売りたい」と考える一方で、買主側(他の兄弟)は「親族間だから安く譲ってほしい」と主張する場合など、価格交渉が難航することがあります。

こうしたトラブルを防ぐためには、不動産会社の査定書や、必要に応じて不動産鑑定士による鑑定評価を参考にしながら、お互いが納得できる価格で合意することが大切です。

また、共有持分の売却にあたっては、登記費用や印紙税、譲渡所得税といった諸費用が発生します。こうしたコスト面についても事前に確認し、トータルでの負担や精算方法を共有者間で話し合っておくと安心です。

さらに、自分の持分だけを第三者に売却する場合も、兄弟関係の悪化や後のトラブルに発展するおそれがあります。売却を検討する前に、他の共有者に対して事前の相談・説明を丁寧に行うことが、関係維持と円滑な処理の鍵となります。

親の家を相続して売却するまでの基本的な流れ

亡くなった親の家を相続し、その後に売却するには、いくつかの重要な手続きが必要です。相続と売却はそれぞれに法律上のステップがあるため、順を追って丁寧に進めていくことが大切です。

以下に、一般的な手続きの流れを解説します。

 


1.遺言書の有無を確認する

相続手続きを始めるにあたって、まず確認すべきなのが「遺言書の有無」です。
遺言書には主に次の3つの種類があります:

  • 公正証書遺言(公証人が作成)

  • 自筆証書遺言(本人が手書きで作成)

  • 秘密証書遺言(本人が封をして内容を明かさず公証人に確認してもらう)

自筆証書遺言がある場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所での検認手続きが必要です。これは遺言の有効性を確認し、内容を確定させるための法的な手続きです。
 

【法務局に預けているケース(自筆証書遺言保管制度)】
令和2年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」により、本人が作成した自筆証書遺言を法務局に預けることができるようになりました。
この制度を利用していた場合は、家庭裁判所での検認は不要で、法務局で保管証明書の発行を受けることで、速やかに遺言内容を確認できます。

自筆証書遺言の保管制度を利用していたかどうかは、法務局で相続人が「遺言書情報証明書」の交付請求をすることで確認できます。
 


2.相続人を調査・確定する

相続手続きの開始にあたり、戸籍謄本などを収集して、法定相続人が誰であるかを確認します。
相続人が複数いる場合は、全員で遺産分割の協議を行う必要があります。

 


3.遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)

遺言書がなかった場合や、遺言の内容に従えない事情がある場合は、相続人全員で話し合い、「遺産分割協議書」を作成します。
ここで、不動産を誰が相続するのか、売却するのかなどを決めておく必要があります。

 


4.相続登記を行う

遺産分割協議で不動産の相続人が決まったら、法務局で「相続登記」の手続きを行います。
この手続きを済ませないと、不動産を売却することはできません。
※相続問期前でも売却活動はできますが引渡しは相続登記完了後になります。

 


5.不動産会社に査定を依頼し、売却活動を開始

相続登記が完了したら、不動産会社に依頼して家の査定を受け、売却活動をスタートします。
複数社から見積もりを取り、信頼できる業者を選ぶのがポイントです。

 


6.売買契約を締結する

買主が決まったら、売買契約を締結します。重要事項説明書の確認や契約書への署名押印など、慎重に進めましょう。
 


7.決済・引渡しを行い、売却完了

契約後、買主からの代金の支払いと物件の引渡しをもって、売却手続きは完了となります。
代金を相続人でどのように分けるかなども、事前に取り決めておくと安心です。

亡くなった親の家を兄弟で共有相続した場合、その後の売却にはいくつかの方法があり、それぞれにメリットや注意点があります。共有者同士での話し合いを丁寧に行い、必要に応じて専門家の助言を受けながら、円満な手続きと売却を進めることが大切です。

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