相続登記とは、亡くなった方(被相続人)名義の不動産について、相続人の名義に変更する手続きです。不動産の所有者が変わったことを法務局に申請し、登記簿を更新することで、法的にも名義が移転したことが明確になります。
これまでは相続登記をしていなくても罰則はありませんでしたが、2024年4月からは義務化され、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料が科されることもあります。特に、今後の相続手続きや不動産売却などを円滑に行うためにも、登記の申請は避けて通れません。
この記事では、相続登記を自分で行う方法について、手続きの流れ・必要書類・申請にかかる費用をわかりやすく解説します。相続が発生し、不動産の名義変更を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
2025/5/21
掲載された記事の内容は制作時点の情報に基づきます。
不動産の「登記」とは、その不動産が「誰の所有物であるか」を公的に記録し、一般に公開する仕組みのことです。
このうち相続登記とは、亡くなった方(被相続人)から不動産を受け継いだ相続人が、その名義を法務局で変更する手続きを指します。
本来、相続によって不動産の所有権は当然に移転されますが、登記がされていないと「名義上は亡くなった人のまま」となり、不動産を売却したり担保にしたりする際に大きな支障が生じる可能性があります。また、相続人が複数いる場合は、将来的なトラブルの火種にもなりかねません。
こうした背景から、相続登記は2024年4月から義務化されました。正当な理由なく登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、相続登記の概要に加えて、
必要書類
登記申請にかかる費用
などをわかりやすく解説します。相続によって不動産を取得された方や、相続した不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
相続登記の手続きは、2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。
これにより、不動産を相続した相続人は、「相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内」に登記を申請する必要があります。
相続登記の義務化は、社会的な問題となっていた「所有者不明土地」の増加への対策として導入されました。これまでは登記が任意だったため、相続登記が行われずに名義が放置され、登記簿を見ても所有者が特定できない不動産が多数発生していました。
こうした不動産は売買や活用が難しく、空き家や管理放棄地の原因にもなっていたため、法改正によって登記の申請が義務づけられたのです。
義務化以降は、相続登記を怠った場合に10万円以下の「過料(行政上のペナルティ)」が科される可能性もあります。
また、登記をしないままでいると、他の相続人との権利関係が複雑になったり、不動産の売却・担保設定ができなくなったりといったリスクも生じます。
不動産を相続した場合は、できるだけ早めに相続登記の準備を始めることが重要です。
専門家に相談することで、手続きの漏れやトラブルを未然に防ぐこともできます。
相続登記には、相続の方法によっていくつかの進め方があります。主に次の3つのパターンがあり、それぞれ手続きや必要書類が異なります。
遺言書による相続登記
被相続人が生前に作成した有効な遺言書に基づいて、不動産を相続する人が決まっている場合の登記方法です。
遺産分割協議による相続登記
遺言書がない、またはすべての遺産について指定がない場合に、相続人全員で話し合って不動産の取得者を決めた上で行う登記です。
法定相続による相続登記
遺言書も遺産分割協議もない場合に、民法で定められた相続割合(法定相続分)に従って不動産を共有で相続する登記方法です。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、状況に応じた適切な手続きを選ぶことが大切です。次章では、それぞれのパターンについて詳しく解説します。
被相続人が生前に遺言書を作成していた場合は、その内容に従って相続登記を行うことができます。
登記申請時には、遺言書の写しや検認済証明書、公正証書などを添付書類として提出します。
遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ取り扱いが異なります。
公正証書遺言
公証役場で作成された公正証書遺言は、形式面での不備がないため家庭裁判所の検認が不要です。そのまま登記の手続きに使用できます。
自筆証書遺言・秘密証書遺言
これらは原則として、登記に使うには家庭裁判所で「検認手続き」を受ける必要があります。遺言書を発見したら、開封せずに速やかに家庭裁判所に連絡し、検認を申し立てましょう。
2020年から始まった法務局の遺言書保管制度により、自筆証書遺言を法務局に預けていた場合は、検認手続きが不要となります。
この場合、相続人は遺言書情報証明書を取得し、それを添付して登記を申請することができます。
公正証書遺言 → 検認不要、すぐ登記申請OK
自筆証書遺言(手元保管) → 家庭裁判所で検認が必要
自筆証書遺言(法務局保管) → 検認不要、法務局で証明書を取得
遺言書の種類や保管方法によって、登記手続きにかかる手間や日数が大きく変わります。遺言書を見つけたら、まずはその種類と保管状況を確認しましょう。
検認とは、家庭裁判所が遺言書の内容を確認し、偽造や変造を防ぐための形式的な手続きのことです。
検認では遺言書の「内容の有効性」や「遺産分けの妥当性」を判断するものではなく、遺言書の存在と形式を確認・記録することが目的です。
自筆証書遺言(※法務局に保管されていないもの)
秘密証書遺言
検認手続きは、遺言書を発見した相続人が、速やかに家庭裁判所に申し立てる義務があります。
また、封がされている遺言書については、家庭裁判所の立ち会いのもとで開封する必要があるため、勝手に開封してはいけません。
法務局に預けられた自筆証書遺言(遺言書保管制度の利用)
検認手続きには1か月以上かかることもあるため、相続登記の期限が迫っている場合は早めの対応が重要です。遺言書の種類に応じて、適切な手続きを進めましょう。
※家庭裁判所へ提出する書類の作成は自分で作成しない場合、司法書士の業務となります。
遺言書が残されていない場合や、法的に効力のある遺言書が存在しない場合には、相続人全員による話し合い(=遺産分割協議)によって、相続する財産の内容や割合を決定します。
この遺産分割協議で不動産を誰が相続するかを決め、その内容に基づいて相続登記の申請を行うことになります。
協議には相続人全員の参加と合意が必要です。
合意が得られれば、相続分は法律どおりでなくても自由に決めることが可能です。
一部の相続人が協議に参加しなかったり、合意できなかったりすると、協議自体が無効となる場合があります。
有効な遺言書が存在せず、相続人全員による遺産分割協議がまとまらない、あるいは協議自体が困難な場合には、法定相続分に基づいた相続登記を行うことが可能です。
法定相続とは、民法で定められた相続人の範囲とその相続割合に従って財産を取得する方法です。被相続人に配偶者がいれば常に相続人となり、そのほかの相続人は次のような順位で決まります。
第1順位:子(代襲相続の場合は孫)
第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
第3順位:兄弟姉妹(代襲相続の場合は甥・姪)
相続順位が上位の者がいる場合、下位の者には相続権がありません。
相続人全員の合意が不要なため、協議ができないケースでも手続きが進められる点が特徴です。
登記申請時には、法定相続情報一覧図や戸籍謄本類をもとに、法定相続人であることを証明する必要があります。
相続人の人数が多い場合には、登記名義が共有状態になるため、不動産の売却や活用が難しくなるケースもあります。
遺産分割協議を行うことが難しい場合の現実的な選択肢ですが、長期的に見て問題が生じやすいため、将来的な活用や売却も視野に入れて慎重に判断しましょう。
続登記は通常、司法書士に依頼して行うケースが多いですが、一定の手間と正確な手続きが可能であれば、自分自身で申請することも可能です。手続きを自分で行えば、司法書士報酬を節約できるというメリットがあります。
ただし、不動産の所在地が遠方であったり、相続人が多数いたり、権利関係が複雑なケースでは専門家のサポートが必要になることもあります。
ここでは、自分で相続登記を進める際の基本的な流れをご紹介します。
相続登記の手続きを始めるにあたって、まず最初に相続する不動産がどのように登記されているかを確認することが重要です。
相続が発生した段階では、不動産の名義が被相続人(亡くなった方)のままになっていることが多いため、名義人の確認から始めましょう。
相続登記の申請には、対象となる不動産の詳しい情報が必要です。そのために「登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)」を取得しておきましょう。この証明書には以下のような情報が記載されています。
不動産の所在地や地番
土地の面積、建物の構造などの物理的情報
現在の所有者(名義人)
抵当権や仮登記などの担保に関する情報
登記事項証明書は、不動産の所在地を管轄する法務局で誰でも取得できます(本人でなくても可)。取得には身分証明書が必要です。
また、法務省が提供するオンラインサービス「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を使えば、オンラインで請求して、以下のような受け取り方法を選ぶことも可能です。
法務局の窓口で受け取る
郵送で受け取る
証明書は1通数百円程度の手数料で取得できます。正確な情報に基づいて申請手続きを進めるためにも、早い段階で準備しておきましょう。
不動産の登記情報を確認したら、次に相続人が誰なのかを明確にする作業が必要です。
遺言書に相続人がはっきりと記載されていない場合や、遺言書自体が存在しない場合には、法律上の相続人(法定相続人)を調査して確定しなければなりません。
相続人を確定するには、被相続人の「出生から死亡までのすべての戸籍」を取得する必要があります。
この作業を通じて、被相続人にどのような家族(配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹など)がいたのかを確認し、誰が相続権を持つのかを法的に特定します。
取得すべき戸籍の例:
被相続人の現在戸籍(死亡が記載されている戸籍)
被相続人の改製原戸籍・除籍謄本(結婚や転籍などで編製された過去の戸籍)
相続人の戸籍(続柄や相続関係を証明するため)
これらの戸籍は、本籍地のある市区町村役場で請求できます。郵送請求も可能です。
相続人が確定したら、必要書類を集めましょう。相続登記には、住民票や戸籍謄本、収入印紙など、さまざまな書類が必要です。
また、相続財産が不動産だけでなく、預貯金や証券など複数ある場合には、「法定相続情報一覧図」の作成も検討すると便利です。この一覧図は、法務局に一度提出することで、相続登記や金融機関への手続きにも利用でき、戸籍一式の提出を何度も繰り返す必要がなくなります。
一覧図の作成は行政書士でも対応可能ですので、ご希望の方はぜひ当事務所にご相談ください。
また、不動産の相続登記に関しては、必要に応じて信頼できる司法書士をご紹介いたします。
遺言書がない場合、被相続人の財産(不動産を含む)は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、「誰がどの財産を相続するか」を決める必要があります。協議の結果、相続人全員の合意が得られれば、その内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめます。
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による捺印が必要であり、書式や内容に不備があると登記や各種手続きで差し戻されることもあります。
当事務所では、遺産分割協議書の作成支援も行っております。形式や内容でお困りの際は、ぜひご相談ください。
また、相続登記を行う場合は、必要に応じて信頼できる司法書士をご紹介することも可能です。
必要書類がすべてそろったら、いよいよ相続登記の申請です。申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に対して行う必要があります。申請方法には、以下の3つの方法があります。
窓口申請:法務局の受付窓口で直接提出します。申請書類を確認してもらえるメリットがあります。
郵送申請:必要書類を揃えて、管轄法務局に郵送します。控えが必要な場合は返信用封筒を同封しておくと安心です。
オンライン申請:法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を使って申請できます。ただし、申請書類に電子署名を付ける必要があるため、あらかじめ電子証明書やICカードリーダーなどの準備が必要です。
申請に不備があると差し戻しになる可能性もあるため、不安な方は専門家への相談も検討しましょう。
不動産登記の専門家の司法書士に依頼することで、書類の確認や作成、申請まで安心して任せることができます。
弊所の提携先事務所をご紹介させていただきますのでご安心ください
ここまで、相続登記の手続き方法や必要書類、注意点についてご紹介してきました。
これまで任意だった相続登記は、2024年4月から義務化されており、放置していると不動産の売却や活用が難しくなるおそれがあります。
相続した不動産を円滑に活用・売却できるようにするためにも、早めの相続登記が重要です。
相続登記を終えたら、不動産を「持ち続けるか」「売却するか」を検討してみましょう。
売却をお考えの場合は、まずは不動産会社に査定を依頼して、現在の価値を把握しておくことをおすすめします。
なお、相続登記の手続きに不安がある方は、司法書士に依頼することでスムーズに進めることができます。また、相続人の確定や法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成などについては、行政書士に相談することも可能です。
ご希望の方には、信頼できる専門家をご紹介することもできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
相続登記は、不動産の活用や売却への第一歩です。手続きに不安がある場合は、無理に一人で抱え込まず、専門家に相談することで、確実かつスムーズに進めることができます。
相続登記やその後の売却についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの状況に合わせた最適な方法をご提案いたします。
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